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大分地方裁判所 平成10年(行ウ)6号 判決 1998年7月28日

大分県別府市鶴見一三四〇番地一―二

原告

井上文夫

大分県別府市光町二二―二五

被告

別府税務署長 永田康昌

右指定代理人

細川二朗

森敏明

吉良輝昭

五嶋繁喜

畑中豊彦

井寺洪太

星野光賢

池田和孝

河口洋範

鈴木吉夫

福浦大丈夫

主文

一  本件訴えをいずれも却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

1  原告

被告が原告に対し、平成八年一一月一日付けでした更正及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

2  被告

(一)  本案前の申立て

主文同旨

(二)  請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

第二事実の概要

一  本件訴えに至る経緯(争いのない事実)

1  原告は、平成八年三月一五日、平成七年分所得税につき、別表<1>のとおり、確定申告を行った。

2  被告は、原告に対し、同年一一月一日付けで、原告の平成七年分所得税につき、別表<2>のとおり、更正及び過少申告加算税の賦課決定(以下「本件処分」という。)をした。

3  原告は、被告に対し、同月七日、別表<3>のとおり、本件処分につき異議申立てをしたが、被告は、原告に対し、平成九年二月六日付けで、別表<4>のとおり、右異議申立てを棄却する決定をした。

4  原告は、同年二月二〇日、国税不服審判所長に対し、別表<5>のとおり、本件処分につき審査請求をしたが、国税不服審判所長は、原告に対し、同年一二月一二日付けで別表<6>のとおり、右審査請求を棄却する裁決をした。

5  原告は、被告に対し、平成一〇年三月二日、本件処分につき、別府簡易裁判所に民事調停の申立てをした(別府簡易裁判所平成一〇年(ノ)第七八号)が、同裁判所は、同年四月二四日、民事調停法一三条に基づき、事件の性質上調停をするのに適当でないと認め、調停しない旨の決定をし、当事者双方にその旨通知した。

二  出訴期間について

(原告の主張)

国税不服審判所長から審査請求を棄却する旨の裁決書を受領したのは、平成一〇年二月二三日ころである。

(被告の主張)

行政事件訴訟法一四条一項、四項は、行政処分の取消訴訟について、審査請求を経由した場合は、審査請求に対する裁決があったことを知った日から起算して三か月以内に提起しなければならず(初日算入)、同条二項は、右期間を不変期間とする旨定めている。これを本件についてみるに、本件処分にかかる裁決書が原告に送達された日は、平成九年一二月一八日であるから、本件処分の取消訴訟にかかる出訴期間は、平成一〇年三月一七日の経過を持って満了したことになる。しかるに、原告が本件訴えを提起したのは、同年五月八日である。

なお、民事調停法一九条は、同法一四条の規定により事件が終了した場合(調停不成立の場合)において、申立人がその旨の通知を受けた日から二週間以内に調停の目的となった請求について訴を提起したときは、調停申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす旨定めているが、本件は、同法一三条により事件が終了した場合であるから、調停申立ての時に訴えの提起があったものとみなすこともできない。

したがって、本件訴えは、行政事件訴訟法一四条所定の出訴期間を徒過して提起されたものであるから、その余について検討するまでもなく不適法であり、却下されるべきである。

第三当裁判所の判断

国税不服審判所長が平成九年一二月一二日付けで本件処分にかかる裁決をしたことは当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば、右裁決書が同月一八日に原告に送達されたことが認められ、右事実によれば、原告は、平成九年一二月一八日には、右裁決があったことを知ったと推認することができる。さらに、本件訴えが平成一〇年五月八日に提起されたことは、当裁判所に顕著である。

したがって、本件訴えは、行政事件訴訟法一四条一項、四項の出訴期間経過後に提起されたものであり、不適法であるといわなければならない(なお、原告は、平成一〇年三月二日、本件処分につき別府簡易裁判所に調停を申し立てているが、右事件は、民事調停法一三条により終了しているから、右同日に、原告が訴えを提起したとみなすことはできない。)。

第四  よって、本件訴えは、いずれも不適法であるから却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して主文の通り判決する。

(口頭弁論終結の日 平成一〇年六月一六日)

(裁判長裁判官 安原清藏 裁判官 脇由紀 裁判官 秋信治也)

別表 課税処分の経緯表

一 平成七年分

<省略>

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